« 一貫して薬物合法化を提唱するエコノミスト誌 | メイン | 天体物理学者カールセーガン博士とマリファナ »

英医学誌ランセットのカナビス(マリファナ)に対する見解

Lancetlogo

英国のランセット誌(The Lancet)はアメリカのニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(The New England Journal of Medicine)と並び、世界の医学界で双璧を成す医学誌です。

1995年11月11日に発行されたランセット誌第346号に掲載された論説記事は「カナビスの喫煙は、長期に及んでも健康に有害ではない」という書き出しで始まっています。長年の間カナビスの合法化 、もしくはせめて非犯罪化を求める声が世の中で高まってきているにもかかわらず、この問題が依然として多くの物議を醸していることを指摘し、オランダの非犯罪化政策を「正気なやり方」と評価しています。

さらに、現場で働く人たちの間でも禁止政策に対する反対の声が高まっていることを指摘して、次のように記述しています:

現 在実施している政策が効果を上げておらず、機能していないということを十分承知している警察署長クラスや各都市の医療担当者などが法の改正を求めているば かりか、建設的な提案も行っている。

マリファナ禁止政策は政治の所業
その一方で、マリファナの非犯罪化を話し合うことを提案した国会議員が袋だたきに合ったり、オランダでもドイツ、フランス、スペインから薬物法を強化するように圧力がかかるなど、問題の根元は政治にあると次のように厳しく批判しています:

政 治をさておけば、カナビスを非犯罪化してどのような被害が生じるというのだろうか?消費者の健康には無害であり、禁止政策なしには資金が稼げなくなる犯罪 組織にとっては大きな打撃になることだろう。しかし、所持の非犯罪化だけでは不充分だと我々は考えている。非犯罪化にともなって、タバコなどと同じように製造元、流通、 宣伝広告を管理監督する必要がある。つまり、オランダのコーヒーショップ制度にきわめて近い制度を導入するべきである。

そしてこの記事の最後にはこう書かれています:

遅かれ早かれ、政治家たちは逃げ回るのをやめて、事実 − つまり危険なのはカナビスそのものではなく、それを地下に潜伏させてしまうことであるという事実 − と向き合う必要がある。

この論説記事は当時大きな反響と批判を呼びました。医学界に占めるランセット誌の位置づけを考えれば当然といえます。

マリファナは酒やタバコより健康被害が少ない
その3年後の1998年11月14日に発行された第352号では、カナビスの有害性を調べる調査の結果が掲載されました。その号の論説でこの調査に触れ、95年の見解にわずかに修正を加えて次のように述べています:

3 年前の論説の書き出しは、もう少し人を刺激しない文章にするのが賢明だったかも知れない。しかし、今回の調査結果から判断すると、カナビスはアルコールや タバコよりも健康被害が少ないと考えるのが妥当である。承知のように、アルコールやタバコは多くの国で容認され、宣伝広告が行われているばかりか、税収源 としても役にたっている。

さらに・・・

気分を変える物質を摂取したいという欲望は世界中の人間社会に、どの時代にも見られる特徴であり、厳格な禁止政策をもってしてもこの欲望を消すことはできていない。[中略]このような法律は問題を解決するのではなく、別の問題を生じさせるだけである*。

* 例えば、時は下って今年(2006年)の3月、国連の国際麻薬管理委員会(International Narcotics Control Board)が2005年1年間の全世界の薬物問題に関する報告書を発表していますが、アメリカではカナビス、コカイン、エクスタシー(MDMA)の使用 者が「特に十代を含む青少年」で減っている一方で「処方薬 − 特に鎮痛剤 − の使用が若い成人の間で増加している」とし、アメリカでの薬物の使用率全 体が依然として極めて高いことを指摘しています。

そ してこの論説の最後を次のように結んでいます:

当誌が3年前に述べた見解には但し書きを付けることにする。つまり、医学的な証拠を検討した結果、カナビス を節度を持って使用する限り健康被害はわずかであることから、カナビスの禁止や合法化については他の観点から議論するべきである。

「医学的にはほぼ問題がないので、他に議論があるのだったら、さっさとそれを話し合って結論を出してください」とでもいいたげです。この問題を ある程度冷静に調べれていくと大半の人があきれかえりますが、これを書いた当時のランセット編集部もそのような気持ちだったのかも知れません。

 そして10年後
ラ ンセット誌の最初の論説記事から10年後の2005年には「規制を設けたうえでの薬物の合法化」を支持するデビッド・キャメロン氏がイギリス保守党の党 首に就任しています。選挙戦では大学時代の薬物使用が取りざたされながらも、袋だたきに合うこともなく選出されています。少なくともイギリスでは時代が少しずつ動いているようです。

カナビスは完全に無害ではない
ここで断っておかなければならないことは、ランセット誌ではカナビスが「完全に無害」とはいっていないということです。「節度」を持って使用すれば「アルコールやタバコ」よりは有害性が少ないといっています。こう考えると、
カナビスは「完全無害」ではないものの「個人や社会がうまく付き合っていけるもの」と考えるのも、それほど不自然なことではないでしょう。

気に入っていただけたら...

Fair Use のご案内

  • 当サイトに掲載される情報のうち著作権で保護されているもののなかには、著作権者の承諾を得ずに掲載されているものもあります。当サイトでは大麻など関する情報を提供することで、社会に貢献することが目的であり、これは国際的に認められる「fair dealing(公正な取り扱い)」、ならびに米国著作権法107項の「fair use(公正な使用)」例外事項に該当するものと考えています。

    This site contains copyrighted material the use of which has not always been specifically authorized by the copyright owner. We are making such material available in our efforts to advance understanding of marijuana and other drug related issues, etc. We believe this constitutes a 'fair dealing' as recognized in copyright laws internationally as well as a 'fair use' of any such copyrighted material as provided for in section 107 of the US Copyright Law.