
現在、このような問題に対して各国政府では薬物を使用した人に刑事罰を科すなどの方法で対処しています。冒頭に、薬物問題に対する考え方が2つに分かれてきていると書きましたが、この対処方法は「考え方その1」に基づくやり方で、簡単にいうと、こういうことです・・・
これが多くの国で現在施行されている、いわゆる禁止政策です。
こ
れに対して、1970年代には別の考え方が登場し、西ヨーロッパ、カナダ、そしてアメリカの州レベルでもこの新しい考え方に基づく政策が模索されるように
なりました。おおざっぱにいうと「問題はもっと複雑なので、もう少し広い視野で物事を見極め、対処する必要がある」という考え方で、これが「考え方その
2」です。簡単にいうとこういうことです・・・
これ全体が問題
つまり、問題を全体として捉えて、薬物を使用する人、その家族、そして社会全体に及ぶ被害や経済的な負担を最小限にとどめようという考え方です。これを「被害軽減」の考え方といいます。
こ
のような考え方に基づいて数多くの国がさまざまな模索を行い、中にはこれまでの禁止政策とは別の政策を実施している国もあります。代表的なのがオランダや
スイスですが、西ヨーロッパ諸国の大半、およびカナダやオーストラリア、そしてアメリカの州レベルでも活発な動きが見られます。
オ
ランダでは、18才以上であればマリファナを免許制の「コーヒーショップ」で購入できるなどの政策を敷いていますが、薬物全般の乱用や薬物関連の犯罪率が
他国に比べて高まるどころか、禁止政策を主導するアメリカと比較すると逆に低くなっています。また、ヘロイン中毒者に医師の監督の下でヘロインと清潔な注
射針などを支給する「ヘロイン・メンテナンス」プログラムを導入しているスイスでは、乱用率、犯罪率が下がり、中毒者の社会復帰率が高まっています。
このように、現在の禁止政策とは異なるやり方でも一定の成果を上げられることが徐々に分かってきていますが、現在の方向の転換を公に主張することは、日本ばかりでなく、多くの国で依然として政治的にかなりの勇気がいることです。その一方で、方向転換をするべきだと考える有識者が大勢いるのも事実です。また、政治・経済ニュースの世界的な権威であるエコノミスト誌(The
Economist)も 違法薬物の合法化(実はこれも被害軽減策の一つ)を長年提唱してきています。
こ
のサイトではマリファナに関する情報を中心にさまざまな話題を取り上げています。薬物問題に馴染みのない方にとっては、一見信じられないような情報もある
かもしれませんが、世界ではこのように被害軽減の考え方に基づいてさまざまな議論や活動が展開されていることを考え合わせて読んでいただくと、この問題に
対する理解をさらに深めていただけると思います。
禁 酒法により政府の威信が大幅に損なわれていることは間違いありません。というのも、取り締まることのできない法律を施行することほど、政府や法律に対する 市民の尊敬の気持ちをなくさせるものはないからです。また、この国では犯罪が危険な水準にまで増えてきていますが、この法律が密接に関係していることは誰 の目にも明らかです。
−- アルバート・アインシュタイン
■ Ringo Starr氏、元ビートルズ
何ですべて合法化し てしまわないんだ?イギリスやアメリカの政策はまったく効果がないと思うし、今のやり方は完全に資力の無駄。クラブに行けばみんなやっている。それが現実 なんだ。弁護士だってほとんどがジョイント(マリファナ・タバコ)やコカインを吸うし、酒も飲む。それでもみんな普通に生活をしているんだ。もちろん問題 もあるさ。ジミー・ヘンドリックスみたいにミュージシャンがたくさん死んでいるからね。でもジミーの場合、どんな法律を作ってもやめやしなかっただろう ね。■ Sir John Mortimer氏、法廷弁護士(マリファナ、大麻について)
(マリファナは)さっさと合法化するべきです。私が担当してきた刑事事件でマリファナが原因だった暴力犯罪は一件もありません。原因はたいていアルコールの暴飲です。あらゆる人たちが(マリファナを)使用しています − 産業界の大物から中年の母親まで、あらゆる人たちがです。このような人たちに刑事罰を科すなどというのは馬鹿げています。
■ John Gray博士、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス、ヨーロッパ思想学博士
社 会に非現実的な価値観を押しつけようとする政治は、最も醜悪な専制政治です。薬物関連政策はまさにそのような専制政治と化しています。何百万人もの人々が 薬物を使用する自由を求めているのは現実であり、どのような禁止政策を敷いてもこれを止めることはできません。そろそろ政府もこの事実を認めて、他人の安 全を脅かさない範囲での薬物使用を認めてもいいころなのでは?
■ Milton Friedman博士、ノーベル経済学賞受賞者
薬物を合法化すれば犯罪件数が減ると同時に、警察の取り締まりの質も高まります。これほど法と秩序の促進に役立つ方策が他にあるでしょうか?薬物が違法である限り、その取り引きには大金がついて回ります。そのような状況がある限り、薬物の取り引きを止めることはおろか、その規模を大幅に縮小することすら文字通り不可能です。
(したがって合法化は)一石二鳥となります。つまり、犯罪活動を直接減らすことができるうえに、取り締まりや犯罪防止策の効果を高めることができるからです。
■ Sanho Tree氏、アメリカ、ワシントンDCの政策研究所、薬物政策プロジェクト特別研究員
薬物問題を持続可能なかたちで管理していこうとするとき、現在の禁止政策が作り出している状況について議論することなく話を進めるというのは、車を修理工場に持っていってボンネットを開けさせないようなものです。もはやこの勝ち目のない対薬物戦争のボンネットを開くときが来ています。■ Johan Hari氏、英Independent紙コラムニスト
違 法薬物市場が一掃できるというのは幻想です。コカイン1キロの価格はコロンビアでは1000ポンドですが、禁止政策があるがために価格が大幅に膨れあが り、ロンドンの街で購入するころには3万ポンドにもなります。利益マージンが3000%にも達するような商売では、普通では考えられないようなリスクを冒 してもいいと考える人たちが必ず出てきます。したがって、この市場がなくなることはありません。一 方、薬物の供給や販売のネットワークを合法化すれば、薬物の取り引きで作り出される膨大な資金を合法的な事業の収益とすることができ、しかもさらに重要な 点として、これに課税すれば政府は新たな税源を得て、現在急務となっている基本保健や教育に予算を振り向けられるようになります。
■ The Economist誌
違 法薬物の取り引きはとても単純で収益性の高い商売です。その単純さゆえに簡単に商売として立ち上げることができ、収益性が高いがゆえに食い止めるのが難し くなります。薬物の価格と流通構造は取り締まりからくる高いリスクによって決定されます。リスクとは、当局による薬物の没収や逮捕収監のリスクをはじめ、 取引相手と約束をしてもそれを保証してくれる法律がないことからくるリスクなどです。■ Sanho Tree氏、アメリカ、ワシントンDCの政策研究所、薬物政策プロジェクト特別研究員
現 在実施されている政策それ自体が、巧妙な薬物組織しか生き残れないような状況を作り出している限り、薬物を一掃する戦争に勝ち目などありません。現実問題 として、この戦いに生き残った者には大きな見返りが待っているのです。どいうことかというと、まず(禁止政策で)供給ルートが締め付けられることにより薬 物の価格とその利益率が大幅につり上がります。そのうえ、私たちが競争相手を逮捕して「間引き」までしてあげているのです。■ Henry McDonald氏、英Observer紙
薬物を合法化す れば、国内外の麻薬カルテルの利益をほぼ瞬時に消滅させることができます。南スペインから遠隔操作で麻薬帝国を指揮するアイルランドの犯罪組織や、麻薬を 資金源とするFarcのようなテロ組織は薬物の価格を人為的に高く設定することができなくなり、需要と供給という単純な経済原理に縛られるようになりま す。
■ Drug Policy Alliance(アメリカの薬物法改革推進団体)
薬物の消費国は大規模な環境破壊を免れていますが、供給国側は大きな被害を被っています。コロンビア政府がアメリカと合同で行っているPlan Colombia計画では除草剤の空中散布が行われていますが、これが熱帯雨林の消滅に拍車をかけています。[中略]空中散布が開始されて以来、重度の健康障害、食品作物や家畜への被害、地上水や周辺野生区域の汚染、そして森林破壊などが起きています。■ メキシコ、El Diario紙
2000年7月にメキシコのララムリ族の村の近くにあるマリファナ畑に空中散布が行われ、300人が健康に障害を訴え、散布の2日後に死亡した2才の女の子の死因も散布された薬剤にあると考えられています。■ Trade and Environment Database(貿易と環境に関するデータベース[TED])
コ カやケシの栽培は違法であるため、農民たちは低地ではなく、役人が来にくい丘陵の斜面に畑を作ります。また、政府が絶えず駆除活動を行っているので畑が長 期的に使える展望はなく、そのため農民たちは土壌保全対策を施すこともほとんどありません。保全対策もとられずに露出した丘陵地の表土は風や雨で流され、 畑は短期間のうちに不毛化してしまいます。さらに、流出した表土が水路や河川に流れ込んで川の進路を変え、洪水を引き起こし、水中の酸素量を低下させて川 の魚を死滅させています。
■タイマ・ニュース編集部(マリファナ、大麻について)
最 大の問題は、私たちの社会が同じ社会の一員である大勢の人々に対して取り返しの付かないことをしている可能性があるということです。これまでに数多くの公 害病問題、薬害問題、そして最近ではアスベストやマンション強度偽装問題などが世の中を騒がせてきていますが、これらの問題のように後になってから大勢の 人々が人知れず被害を受けてきたことが明るみに出るという事例は、特に珍しい出来事ではなくなってしまいました。何 年後、何10年後になるかは分かりませんが、薬物禁止政策も、これらの問題と同じように私たちが社会的反省を込めて振り返るときが確実にやってきます。現 段階では、薬物使用者の増加に伴って、禁止政策の弊害も年々大きくなってきています。にもかかわらず日本では、マリファナを使用した著名人などが逮捕され たニュースや、どこかの空港で大量に押収されたというニュース以外、マリファナに関するニュースや情報はほとんど耳にすることがありません。
また、かなりニュース性の高い海外の情報でも、日本ではまだまだ広まっていないようです。例えば、世界の二大医学誌の一つである英Lancet紙がマリファナをお酒やタバコよりも害が少ないと伝えていることや、天体物理学者のカール・セーガン博士も大のマリファナ好きだったということ、政治経済誌の本家本元、英Economist誌が違法薬物の合法化を長年提唱してきていることなどを知る人もあまりいません。
日本の一般メディアではなぜこのような情報が伝わってこないのでしょうか。その理由はともかく、そのおかげで日本の一般の人たちは先進国の中でも極端にマリファナや違法薬物の問題全体について情報不足になっているというのが現状です。
そ してその影では、多くの人たちが逮捕され、犯罪歴が付けられ、就業や就学の機会を奪われ、社会的なレッテルを貼られているのです。これこそが最大の問題で す。大麻を禁止したそもそもの根拠が「大麻は危ない」ということだったのだとしても、今では上記のようにその根拠の再検討を迫るさまざまな材料が揃ってき ているのですから。
■ Drug Policy Alliance(アメリカの薬物法改革推進団体)のウェブサイトより
薬物とテロ
薬物とテロとの間には確実なつながりがあります。[中略]どこのテロ組織でも薬物の取り引きで大きな資金を手にすることができますが、このような薬物とテロとの関係は対薬物戦争があるからこそ生じるのです。[中略]アフガニスタンの旧タリバン政権は薬物禁止政策が「あったにもかかわらず」アヘンの取り引きで大きな利益を上げたのではなく、禁止政策が「あったからこそ」利益を上げることができたのです。薬物と人種
ア メリカの人口に占めるアフリカ系アメリカ人の割合は12.2%、薬物使用者に占める割合は13%しかないにもかかわらず、薬物違反逮捕者の38%、薬物違 反で起訴される人の59%をアフリカ系アメリカ人が占めています。そのため多くの人が対薬物戦争を「新たなジムクロー(黒人差別政策)」と批判していま す。[中略]刑の不平等を示す最も端的な例としては、クラック・コカインと粉末コカインの刑の格差があります。クラックと粉末コカインの有効成分は同じで すが、クラックは主に有色人種の多い低所得者層が使用しています。クラックを5g売ると5年間の最低強制刑期が科されますが、粉末コカインの場合は 500g売って初めてこれと同じ刑期になります。薬物と女性
1980 年代には、メディアが作り出したクラック・コカイン騒ぎを受けて、女性、特に妊娠中の女性が懲罰的な取り締まりの対象となっていきました。胎児へのコカイ ンの影響に関する根拠のない、誤解を招くような話が大々的にメディアで取り上げられました。[中略]今日では、当時いわれていたコカインの胎児への影響の 大半が誇張されたものであり、コカインが原因とされてきた問題には他の原因があることを示す調査研究がいくつも発表されています。[中略]にもかかわら ず、アメリカの多くの州では薬物の使用を理由に親権の剥奪などが法律で定められています。
■ タイマ・ニュース編集部
オランダの例を見てみましょう。オランダでは1976年にマリファナの所持と小売販売を非犯罪化し、18才以上であれば免許制の「コーヒーショップ」でマリファナが購入できるようになりました。この制度では一回の販売量が制限され、宣伝は禁止、18才未満への販売も禁止されるなど、さまざまな規制が設けられています。1990年代の調査では、オランダにおけるマリファナ使用率は禁止政策を敷く他のヨーロッパ諸国と変わりませんでした。一方、アメリカと比較すると次のようになります:
マリファナ使用率の比較
年齢 オランダ アメリカ
12〜15才: 7.2% 13.5%
16〜19才: 29.5% 38.2%
人口全体: 28.5% 31.1%オ ランダ政府の狙いの1つに、マリファナなどのソフトドラッグを非犯罪化することで青少年の目から見たマリファナの「輝き」を中和し、反抗のシンボルなどと して使用されないようにするという狙いがありましたが、オランダとアメリカの「16〜19才」と「人口全体」の数字をそれぞれ比較すると、この狙いは達成 されているようです。つまり、オランダの場合「16〜19才」と「人口全体」とでは使用率にそれほど差は見られませんが、アメリカでは「16〜19才」の 使用率が「人口全体」を大きく上回っているということです。
し かも、マリファナ以外の薬物の使用率にも影響が見られます。アムステルダムは世界で最もマリファナが入手しやすい都市ともいわれますが、同市に住む12〜 19才の青少年でコカインを使用したことのある人の割合は0.3%です。一方、アメリカの12〜17才の青少年の使用率はその5倍以上の1.7%でした (いずれも1994年調べ)。アメリカの調査をアムステルダムと同じ19才にまで広げたらさらに使用率が高くなることも考えられます。
■ The Economist誌
薬 物の危険性を過小評価するべきではありませんが、過大評価もまた控えなくてはなりません。ヘロインを除き、違法薬物による死亡率はニコチンやアルコールに よる死亡率を大幅に下回っています。例えばアメリカでは、タバコの喫煙による死亡率はヘロインによる死亡率よりも高く、アルコールの飲用による死亡率は、 コカインによる死亡率よりも高いのです。■ John Gray博士、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス、ヨーロッパ思想学博士
薬物の本質的な危険性はどうあれ、使用する薬物の品質が正しく判定できないと使用者は余分なリスクを負うことになります。人々がきちんとした情報に基づいて(薬物の危険性について)判断ができるようにするには、多くの人が使用する薬物を合法化し、厳重な品質評価を実施したうえで管理された販売ルートで販売する以外にありません。
■ 故Carl Sagan博士、天体物理学者(マリファナ、大麻について)
私は(薬物の)摂取量を知覚した時点から、摂り過ぎになってしまうまでの時間の比率「R」が重要な意味を持ってくると考えています。私はLSDは摂ったことはありませんが、LSDのR値はとても大きく、カナビス(マ リファナ、大麻)の値は小さいのです。向精神薬物の安全性を考えるとき、このR値を安全性の判断基準の一つにするべきです。カナビスが合法化された暁には パッケージにこの数値を表示してもらいたいと私は考えていますし、合法化もそう遠くない将来に実現することを願っています。司 会)なるほど。向精神薬であればこそ必要な表示もあるわけですね。しかも、そのような内容表示や品質管理をするには、ヤミ取引されていたのでは無理で、合 法化するのが最も良い方法だということですね。しかし、例えばクラックのように危険性が高いといわれる薬物もあるわけですが、このような薬物にはどう対応 していけばいいのでしょうか?
■ Michael Gazzaniga博士、ダートマス医科大学 精神医学(神経科学)博士、MIT Pressの認識神経科学ジャーナル編集長
クラックの中毒率が高いことが確実に立証された場合、逆説的ではありますが、合法化することによってその使用量が減ることも考えられます。つまり、コカインとクラックが同じ価格*で買えるようになったら、中毒性の強さを知っている乱用者は強力なハイ(陶酔感)が得られるクラックの使用をやめ、より穏やかなコカインに切り換える可能性があるからです。お酒の場合でも、短時間で酔えるアルコール度数60%のお酒の販売量が、度数43%のお酒に遠く及ばないことを思い起こしてください。
* 現在はコカインのほうがクラックよりも大幅に価格が高い。
■ The Economist誌
違法だと薬物には強さが求められるようになります。つまり購入するのにリスクが伴うのであれば、濃縮されたかたちで購入したほうが合理的だということです。1920年代のアメリカの禁酒法時代にもビールの消費量が減り、度数の高い酒類の消費量が増えました。
■ Michael Gazzaniga博士、ダートマス医科大学 精神医学(神経科学)博士、MIT Pressの認識神経科学ジャーナル編集長
薬 物の「使用率」は、環境や流行などさまざまな要因によって変動していくでしょう。薬物の「乱用率」はそれほど変動しませんが、薬物禁止政策による社会への マイナス影響の多くは(合法化により)中和されます。ただし、薬物乱用に起因する保健支出がゼロになることはありません。これに関しては神経生物学、神経 行動学分野の研究に真剣に取り組み、薬物被害に遭う人の割合を最少限にとどめる努力をする必要があります。私は実験科学者であり、大半の人たちと同じように現在の政策が機能していないことは見れば分かります。今とは違った取り組み方が求められています。合法化しても何らかの理由で状況が改善されなければ、5分もあればもとの政策に戻せるのです。
■ Joseph McNamara氏、カンザス・シティー市、及びサンノゼ市の元市警察本部長、フーバー研究所特別研究員
対薬物戦争(薬物禁止政策)を白日のもとにさらせば、それをもはや正当化することはできません。人々が実態を知ったら、ベトナム戦争と同じようにたちどころに崩壊するでしょう。■ The Economist誌
この問題を、離婚や妊娠中絶と同じように道徳的観点から捉えている人も大勢いますが、道徳的な憤慨を政策決定の根拠にするのは不適当だということはもはや明らかです。■ 丸井英弘弁護士(マリファナ、大麻について)
民 主主義社会においては、人民が主人公であり、法律は人民の幸福のためにのみ奉仕すべきものであって、法律が主人公では決してない。現在の国家秩序を絶対の ものとして、それに盲目的に従う態度は、民主主義社会における自立した市民のあり方ではない。いかなる権威にもとらわれず、自主的判断に従って行動する人 間こそが目標とされるべきである。マリファナ問題とそれを規制している大麻取締法をいかにとらえるかということは、我国における民主主義の成熟度を計るバロメーターであろう。
■ John Humphreys氏、英Sunday Times紙
私が確実にいえることは − これは首相以下、英国民全員が分かっていることですが − 現在のやり方が機能していないということです。民 主主義国家ではよくあることですが、問題の真の背景がその問題の功罪にあるのではなく、政治家として冒険的な言動をしたときにどのような波紋が待っている かという政治家側の恐怖心にあります。薬物問題の場合、政治家が恐れるのは年々考え方が柔軟になってきている世論ではなく、マスコミです。どこかの新聞が 自分の言動をセンセーショナルに書き立てる危険性があることを政治家は百も承知しているのです。
■ James Delingpole氏、作家、英Daily Telegraph紙のコラムに寄せて
文 明社会にとって薬物は嫌悪されるべきものだとあなたは考えるかも知れない。薬物が肉体的に危険で、社会を破壊し、道徳的に弁解の余地のないものだとあなた は考えているかも知れない。しかし、薬物を良いものと考えない人でも合法化を支持することはできるのです。つまり、私たちが迫られている選択肢は薬物のあ る世界とない世界のどちらかを選択することではなく − これはもはや不可能 − もはや逃れることのできない状況をできるだけ良い方向に持っていくの か、それともますます悪化させていくのかのどちらかを選択することなのです。これさえ認識できればいいのです。
■ Lionel Shriver氏、英Guardian紙
ア ルコールと同じように、規制を設け、課税し、監督します。こうすることで薬物を求める人たちが犯罪組織の食い物にならずにすみます。こうすれば製品の純度 や含有量が保証されるので薬物関連の死亡事故を減らすことができます。また、普段とは違った気分を味わいたかったというだけの理由で刑務所に収監されてい る人々を放免し、警察は実際に人々に危害を加える犯罪者の取り締まりを強化することができるようになります。さらに、禁止されているからこそある意味で羨 望の的となっている薬物の「輝き」を中和することもできます。■ The Economist誌
合法化は 一筋縄ではいきませんが、政府の役割は、第一に手に負えない薬物使用者が他の人に危害を与えるのを防ぐこと、そして第二に規制を設けることで最低限の品質 と流通の安全を確保することにあります。前者を実現するのは警察がすべての薬物使用を取り締まるのに忙しくしている間は困難であり、後者を実現するのは薬 物が違法であるかぎり不可能です。■ George Soros氏、国際投資家
私 ならまず、厳重に管理された流通網を設け、そこではクラックのようにきわめて危険性の高いものを除いてすべての薬物が合法的に購入できるようにします。最 初は価格を十分に下げて犯罪組織による薬物の取り引きを壊滅させます。これが達成されたら、タバコ税のように価格を徐々に上げていきます。ただし、犯罪の 誘発を防ぐために登録中毒者は例外扱いとします。そして、得られた収入の一部を薬物使用防止対策や治療に当てていきます。
■ Anthony Grayling博士、哲学者、バークベック・カレッジ 哲学講師、オックスフォード セント・アン・カレッジ非常勤研究員
優 れた社会を量る物差しの一つとして、市民一人一人が、主に自分だけに関わる問題について自らが意思を決定する権利が認められているかどうかということがあ ります。ヘロイン、コカイン、マリファナの問題はまさしくこれに当たります。私の考えるところ、このような薬物が合法的に入手できる社会は優れた社会で す。ただし、これは薬物そのものが良いものだからというのではなく、それを使用したいと考える個人の決定権が尊重される点で優れた社会だということです。 このような社会は、これ以外の理由からも − その大半は実利的な理由ですが − 今よりも優れた社会となります。
ここではマリファナ禁止政策が社会に与える大きなマイナスについて簡単に説明したいと思います。
大麻のことを考えてまず頭に浮かぶのが、それを所持したり、使用すると刑事罰を受けることがあるということです。これはつまり、違反者には一生ぬぐい去ることのできない「前科」が付いたり、社会的なレッテルが貼られるということです。このような経歴を持つ人は就学や就職、海外渡航など「普通の」人たちに与えられる人生のさまざまな機会や権利が奪われ、社会的にも制裁を受けることになります。
「法律を犯したのだから当然」で終わっていいのか
法律に違反したら何らかの処罰を受けるのは当然ですし、このサイトを閲覧する人にも絶対に法律に違反するような行為は慎んでいただきたいと思っています。
しかし「法律を犯したのだから当然」と言い切るためには、重要な大前提があると思います。それはその法律が理に適っていなければならないということです。いいかえると、理に適わない法律で人を罰したり、辛い思いをさせるのは避けなければならないし、そのような危険性が少しでもある場合には社会として法律の合理性を問い正すのは当然のことだと思います。
大麻の場合、1998年には世界の2大医学誌の1つであるランセット誌が論説記事の中で「カナビス(マリファナ、大麻)はアルコールやタバコより健康被害が少ないと考えるのが妥当である」と明言しています。また、海外では大麻の有害性をアルコールやタバコ以下と結論づけている調査研究も数多く発表されています。さらに、現在の違法薬物問題に対する世界的な取り組みに疑問を投げかける有識者も大勢いますし、権威ある政治・経済誌のエコノミスト誌でも違法薬物の合法化を長年提唱してきています。
つまり、大麻取締法が施行された当時の根拠が「大麻は危ない」ということだったのだとしても、今ではその根拠を見直してもいいだけの材料が数多く出てきているのです。マリファナをはじめとする薬物犯罪はよく「victimless crime=被害者なき犯罪」と呼ばれますが、最大の被害者は実は薬物禁止政策により辛酸を飲まされている薬物法違反者なのです。
私は大麻など使用しないので直接関係ないのですが・・・
ごもっともです。ただ、この法律のおかげでいまだに毎年多くの人が刑事罰を科せられたり、社会的なレッテルを貼られたり、辛い思いをさせられています。しかも、このような刑罰や社会的制裁の根拠が希薄になってきていると考えるに足るだけの情報が今では数多く存在します。にもかかわらず、私たちがこのような法律を、何の疑問も持たずに継続させているのはなぜなのでしょうか。このような社会がはたして良い社会といえるのか、考える必要があると思います。
イギリスの哲学者アンソニー・グレイリング博士が、優れた社会、特に薬物との関わりにおける優れた社会について語った言葉で今回は締めくくりたいと思います。
優れた社会を量る物差しの一つとして、個々の市民が、主に自分だけに関わる問題について自らが意思決定をする権利が認められているかどうかということがあります。ヘロイン、コカイン、マリファナの問題はまさしくこれに当たります。私の考えるところ、このような薬物が合法的に入手できる社会は優れた社会です。ただしこれは、薬物そのものが良いものだからというのではなく、それを使用したいと考える個人の決定権が尊重される点で優れた社会だということです。このような社会は、これ以外の理由からも − その大半は実利的な理由ですが − 今よりも優れた社会となります。
医療や環境の面で様々な可能性を秘めているマリファナ(大麻)ですが、禁止政策のためにそのメリットが充分に活用されていません。ここではそのあたりのことをお話ししていきます。
産業用大麻
大
麻は日本では少なくとも縄文時代にはすでに繊維として使用されていました。縄文土器に模様を付けるのに使われた縄も麻で作られたものだといわれています。
戦前までは多くの農家で栽培され、大麻の繊維製品や油は日本の文化とは切っても切れない存在でした。織物などでよく見かけるこの模様も麻の葉を表したもの
です。
戦後はアメリカ進駐軍の政策によって栽培が大幅に制限され、そのころから大麻に対する現在の見方が日本社会に定着していきましたが、幸いなことに今でも一部の地域では栽培が続けられています。
大麻は繁殖力が強く、あらゆる気候で育ち、肥料や用水をあまり必要とせず、害虫にも強い、とても環境に優しい植物です。一方、綿花(コットン)は大量の肥料と殺虫剤を必要とします。大麻とコットンを比較すると次のようになります:
T-シャツを麻で100枚作った場合のコットンとの比較
節約できる
エネルギー: 190,000kJ
土地面積: 80平方メートル
用水: 281,600リットル
不要になる
化学肥料: 7.7kg
農薬: 50g
資料:US Environmental Protection Agency, United Nations Food and Agriculture Organiztion, World Wildlife Fund, World Health Organization, Pesticide Action Network North America
この他にも、大麻は最近話題のバイオ燃料としても有効活用できるので、CO2の排出削減にも大きく貢献することができます。
1930年代にアメリカで大麻が禁止された背景には、当時合成繊維の市場拡大にとって大麻を脅威と感じていたデュポン社の影響力が大なり小なりあったといわれていますが、そもそも禁止されるようになった理由は何にせよ、人や環境に優しい社会を築こうとするなら、戦後の大麻に対する固定観念をもう一度見直し、資源としても有効活用する方法を考える必要があります。
医療大麻
人
類は、大麻を何千年もの昔から薬として使用してきました。現在欧米では、緑内障の患者さんが眼圧を下げるために、抗ガン剤治療を受けている人やエイズ消耗
症候群を患う多くの患者さんが食欲増進や症状の緩和のために使用しています。また、カナダやアメリカの一部の州では医師の処方があればマリファナを免許制
で入手することができ(アメリカでは州と連邦政府との間で対立が続いていますが)、このような患者さんのために専用に有機農法で栽培する業者さんも登場し
ています。オランダでは政府がマリファナを専門に扱う薬局の設置を計画しています。
大麻の薬品としての効能を裏付ける調査研究も数多く発表されていますし、大麻に含まれる成分がガン細胞の成長を抑える働きがあることを示す調査も数多く発表されています(1 , 2 )。また最近ではアルツハイマー病の治療において、マリファナの向精神成分であるTHCが、治療薬として現在使用されている医薬品よりも大幅に効能が高いことを示す研究 も発表されています。
現在欧米諸国では、政治家も医療大麻の問題を無視できない状況に徐々になってきています。アメリカの連邦(国)レベルでは大麻には医薬品としての効能はまったくない としていますが、このような主張はもはやマスメディアですら鵜呑みにすることはないようです。2006年6月の段階で、州法で独自に医療大麻の使用を認めているアメリカの州は11を数え、今後も増え続けるものと考えられます。
日本では依然として「大麻=麻薬=悪」というような間違った固定観念で論じられるばかりで、大麻に関する本格的な研究すらされていないなか、1999年には患者さんとその家族、医療関係者、法律家、ジャーナリスト、市民のネットワークにより「医療大麻を考える会」が発足しています。




